アレルトメイア帝国との戦争は先行きが不透明だった。
イステラからすれば一方的な難癖を吹っ掛けられた、ということもあって全体としてみれば戦意は決して低くなかった。だが望んで始めた訳ではない。それ故に国民感情はまちまちであった。
水際での防衛で良しとする者、はたまた、敵主星まで乗り込んで完膚なきまでに叩けという者。和平の道を探れという者。そのどれにも賛同者がいた。
政府としてもさっさと切り上げたい、というのが本音だった。ようやく前の戦争の傷跡が消えかけたところである。まだまだ完全な復興には時間がかかる。その矢先のことだからであった。
だが売られた喧嘩は買わねばならぬ。舐められたらそこで終わりである。国としての威信は守り通さねばならぬ。
だが落とし所はどこなのか。
どこまでいけば、アレルトメイアに兵を引かせる事ができるのか。
それを最優先課題として最高幕僚部の各研究室は叡智を結集していた。
それ故、俄然脚光を浴びたのがエメネリアである。
現アレルトメイア皇帝の腹違いの姉、有力貴族の養女、という肩書は問題解決の糸口を探るには格好の人物だと目されたのである。
だが、それこそアレルトメイアが内戦で苦しんでいる時にはエメネリアには目もくれなかった。どころか厄介払いも兼ねてエメネリアを帰国させるのも已む無しと考えていた軍上層部だった。
ところがアレルトメイアと開戦するに至ってからは、ものの見事に掌を返した。
エメネリアを中央総司令部統合作戦本部最高幕僚部に呼び寄せようとしたのである。
だがレイナートはこれに断固反対した。「あまりに勝手すぎる!」と。
幸いシュピトゥルス提督の理解も得られエメネリアはリンデンマルス号から降りずに済んだ。もっともこちらは前線部門と参謀部門の確執という背景もあった。つまり「お前らの好きにはさせんぞ!」ということであった。
だがリンデンマルス号が爆破処理され退役したことで話が変わったのである。
それでもエメネリアは一応、部下としてレイナートの下に留まれることになった。それは認めてやる。その代わり他の研究室に協力しろ、という交換条件の上でである。
申し訳ないと頭を下げるレイナートにエメネリアは笑顔で言った。
「室長のために喜んでいきますわ。そうして思い知らせて差し上げます。エメネリア・ミルストラーシュはレイナート・フォージュの下でこそ輝く、と」
喜んでいいのか、悲しんでいいのかわからないレイナートだった。
そのエメネリアは連日他の研究室に呼び出され、尋問のような質問をされた。
この時代にあってまだ身分制度を導入し、貴族が幅を利かせる社会。それを国民はどう考えているのか。
アレルトメイア人は何に喜び、何に怒るのか。
まずはアレルトメイア人の思考を知らねばならないとして。
国境を接していながら長らく没交渉であったが故に、隣人が何を考えているのか全くわからないという不気味さ。
それを解消しようと矢継ぎ早に質問されるエメネリアとネイリ。
片や支配者側の代表として、片や被支配層の代表として。
社会学者、心理学者まで動員して2人を徹底的に調査した。
だがたった2人の人間に6800億人を代表させるのはどう考えても無理がある。だが他に手立てはない。微に入り細に渡って質問がなされる。
それに毅然と答える2人。
特にエメネリアは亡命した際にアレルトメイア軍について細かく尋ねられた。だが今度はアレルトメイアという国とその国民に対しての問である。
戦争の早期終結を目論むのはわかるが、まるで自分を丸裸にされるが如き質問にいささか疲れも感じ始めていた。
だが解放される気配は全くなかった。
ところで色々とあるものの、とりあえず第101研究室も始動していた。
エメネリアを欠き研究員5人体制。人手不足は元からだったが、エメネリアが抜けた穴、ということを感じることは少なかった。それは元々、他国人だからというのが正直なところではあった。
だが彼女のために用意されたブースがいつまでも無人というのは寂しくもあった。
だから食堂で顔を合わせると皆が気遣った。
「大丈夫? 変なこと聞かれてない?」
「疲れるでしょう? 夜はゆっくり休めてる?」
「ええ、大丈夫。皆さん紳士的に対応してくれてるから」
エメネリアは微かな笑みとともにそう答える。
「ただ、私を全貴族の代表と見做されるのはちょっとね……」
「それは大変ね」
確かに自分を9千億に上るイステラ人の代表、などと思われたら「勘弁してよ」と言いたくなるに違いない。
「ところでそちらはどう? 上手く進んでるのかしら?」
「こっちはこっちで大変よ」
皆がゲンナリとした顔を見せたのだった。
それは作業には取り掛かったものの、そのあまりの仕事量の多さに既に辟易していたからだった。
そもそも、かつてのディステニアとの戦争の発端は空間争奪の揉め事から始まった。
各国の国境はその支配下とする最も外側の恒星系同士の中間地点と定められていた。そこに幅50kmから100kmの中立緩衝帯と呼ばれるものを想定し、これを国境としたのである。
だが恒星系は近いものでも数光年は離れている。その間に100kmの幅などないに等しい。だがそれでも問題にはならないほど宇宙は広大だった。
ところがその当時、星間物質の中でも宇宙塵と呼ばれる微粒子を大量に集め元素とする技術が確立した。これは人類に大きな福音となったのである。
惑星や衛星といった天体からの天然資源採掘では必ず限界が訪れる。だが広大な宇宙に漂う星間物質は無尽蔵に等しい。
だがそれはあまりにも希薄で、工業原料とするまでにするには膨大な時間を掛けて想像を絶する広さからかき集める必要があった。
それを短時間で成し遂げるシステムの開発に成功したのである。あとはとにかく広い範囲を動き回るだけでいい。
そうしてこの集塵機能を持つ船はどんどん大型化し、最終的には元素生成工場までも併せ持ち、まるで軍事要塞のように大型となって宇宙塵を求めて空間を駆け巡ったのである。
このことは現行の主力艦艇に搭載されていない理由でもある。すなわち希薄な星間物質を集め必要量の元素とするには、そのシステムは巨大すぎたのである。
そうして当然ながら軍はこれを守る護衛部隊を同行させた。どれほど大きくとも実質は民間資本の工場であり、したがって武装はしておらず、それは海賊の格好の餌食だからであった。
これが後に、いわゆる国境侵犯につながり、2国間関係を悪化させるに至ったのである。
ところで、広大な宇宙空間であるから、どれほどの大部隊であっても物理的に展開できないということはない。
それ故、戦争中において全戦闘艦艇を投入し、一気呵成の大攻勢を掛けて敵の主星を攻略し戦争を終結させろ、という者がいる。時にそれが政治家、それも最高評議会の重鎮であったりするので軍も笑い話で済まなくなることがあった。
すなわち「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」という格言そのものなのである。
そういう人物は戦争は戦闘艦艇だけで行うものだという頭があるので、兵站の重要性を一から説明しなければならない。
例えばイステラの主星トニエスティエからディステニア、アレルトメイアとの国境まではおよそ1万光年ある。第四管区の主星・惑星ミベルノからは1万7千光年にも達する。
イステラ軍の主力戦闘艦艇の最大ワープ距離は長らく85~100光年だった。部隊は最も脚の遅い艦に行軍速度を合わせるから、1日に4回のワープをしても300光年余が限度であり、したがってトニエスティエからは30日近く、ミベルノからなら50日以上かかる。
さらにそこから敵主星まで進軍するとすれば当然補給が必要となる。
宇宙艦艇の補給の最たるものは空気と水、そして食料である。閉鎖空間である艦内では兵員の生存のためにこれは最優先される。
艦内は当然気密が保たれているが、艦載機の出撃や補給物資の搬入の際に必ず少なくない空気を流失する。これを放置すれば当然艦内の気圧が下がる。すると酸素分圧が下がり乗組員は地上における高度障害と同じ症状を呈する。
ヒトという生物は高い環境適応能力を有している。だが当然限界が存在する。
数百万年掛けて進化の過程で得たものを、わずか数千年で根底から変えるというのは無理なのである。
したがって艦内空気は常に一定気圧に保たれるよう液体窒素や液体酸素といった備蓄を使って補われる。また二酸化炭素から炭素を分離し酸素濃度が一定に保たれるように空調設備がフル稼働している。
自らの汚物の再利用もするが、飲料水は液体酸素と液体水素からも生成される。
したがって艦内には液体化された元素を保管する大型タンクが備わるが、これらは定期的に補充される必要がある。
食料も生存には欠かせない最重要要素である。
ヒトの3大欲求の一つである食欲。それを満たすには、単に科学的に分析され必要とされる栄養やらカロリーやらを摂りさえすればいい、ということにはならない。
この時代、人体が一日に摂取すべきとされる栄養素を含む高カロリー食品も小さな錠剤程度に収める技術を有する。だがこれを摂取するのは最早食事ではなく薬を服むような感覚となる。だけでなくこれは人の空腹感を直ぐには満たしてくれない。腹の減った状態でこれで十分だからと錠剤を1つ渡されても物足りなさは解消されないのである。
空腹感を感じるということは、エネルギー源であるブドウ糖が不足している訳だが、血糖値が下がった状態でこの高カロリー食品を口にしても、血糖値のレベルが直ぐに回復するのではないので空腹感を感じたままになる。
そこで他に何か食べたいと感じる。それが多大なストレスになる。そういう状態で任務を果たすのは無用なトラブルが発生しかねない。
ではそれを解消しようと艦内PXで何かを購入して食べたら? 気づいた時には過食状態であり、肥満のみならず重篤な内臓疾患を起こしかねない。
ではと言ってダイエット食品よろしく、食べても腹が膨れるだけでカロリーも何もないものならいいかと言えば、それなら初めから普通に食べればいいではないか、という話になり本末転倒である。
そこでイステラ軍の宇宙食は、基本は人が十分食べたと意識できるギリギリ最小限度の量に、必要な栄養素を盛り込んだ合成食である。
そうしてパンや麺類と言った穀物製品、肉、魚、野菜といった天然素材の味、形、食感をできる限り再現することに意を用いている。
それは端的に言えば「無駄」の範疇に含まれることである。
だがこの「無駄」が必要なのである。
人類の生活から一切のムダを省いたら、さぞや機能的で効率の良い社会になるだろう、というのは妄言である。そうでないと思うなら、一体どれほどの期間実行できるのか、自分で試してみればいい。答えは自ずから出る。
もっともピーマン嫌いなコスタンティアのように、中には「なんでわざわざそんなものを再現するのよ!」と思う人間がいない訳ではないが。
いずれにせよ、したがって食料は艦内貯蔵庫の大部分を専有する。
それ以外にも消耗部品や修理部品の補給は必須である。宇宙艦艇や基地の乗組員はただ生きてさえいれば良い訳ではない。任務を行うために過酷な宇宙空間に飛び出しているのである。
そうしてイステラ軍の通常艦艇も内部に工作室を持つ。これは内作を行うためであるが、その規模としては小さなものである。したがって補給は不可欠である。
よって、これらは全て補給を前提にしている。
もしも全部隊を一度に出撃させるとなったら、その兵站は国家経済を圧迫するだけでなく、国民生活も犠牲にするだろう。否、犠牲という言葉で済むのかどうか。
ならばと言って、もし補給無しでこれを行う、行える部隊とするならば、部隊は全てリンデンマルス号で編成される必要がある。
リンデンマルス号は3千人にも及ぶ乗組員を擁していながら基本的には補給をほとんど必要としなかった。かなりの部分を自ら賄えたからである。
だがそれは、致命的な設計ミスの副産物だった。もし設計通りに建造されれば、それこそ2~3ヶ月に一度の補給を受けなければ行動はできなかっただろう。
莫大な国家予算を費やして建造したリンデンマルス号。これを全イステラ軍に配備するというのは不可能である。
たった1隻造るだけで四苦八苦し2番艦は建造されなかったのである。全軍に配備などということがどれほど愚かな発想かは多言を要しない。
また、もしもそれほどの大部隊をよしんば出撃させたとして、万が一負けたらどうなる?
確かに、敵を凌ぐ大兵力を以ってこれを討つ、というのは戦略の基本ではある。
だが「勝負は水もの」「勝負は時の運」とも言われるように、絶対に勝つという保証は誰にもできない。できる訳がない。
もし全軍を出撃させて負けたらその後をどうするのか? 国土と国民が蹂躙されるのを指を咥えて見ていろと言うのか?
それは民主国家の軍隊のあり方ではない。
軍隊の目的はそもそも国防である。
国土と国民の生命、生活、財産を守るために軍隊が存在する。
その軍隊が、ギャンブルよろしく、国民の生命や国土を賭けなどにするか?
そんなことはありえない。あるとすればそれはもう正しい国家のあり方ではない。
だが、人間が行うことの中で戦争ほど愚かで無駄なものはない。
だが人間はそれを繰り返している。
したくないと思いつつ戦争を始め、早く終わりにしようと思いつつ継続する。
何故か?
それは自らと相容れない「敵」が存在するからである。その敵とどう向かい合うか。どう戦い、どう勝つか?
それにはまず「敵」を知ることである。
エメネリアが他の研究室に呼ばれるのはそのためである。
一方、第101研究室は数多ある戦闘記録の中からある会戦をサンプルに取り上げた。
それは対ディステニア戦争時代の1個師団に増援2個旅団、すなわち戦闘艦艇だけで5千余隻、のべ8千隻の後方支援艦が投入された比較的大規模の作戦である。
この投入部隊の兵員の女性比率を変化させ、それがどのように戦果に影響を及ぼすかをシュミレートする、というのが最初の取り組みだった。
ただしイステラ軍では過去に徴兵された女性兵士の前線実戦配備という実績がない。戦闘艦の後方管理部門への配備すら非常に少なかったのである。
そこで問題を2つに分けた。
一つは男女、もう一つは志願兵と徴募兵。
この違いをはっきりさせて、それから次に臨むことにしたのである。
ところがまずその投入された兵員の男女比すらまとめられたものがなかった。
兵は何名、下士官何名、士官何名と階級ごとに総数は出ている。だが男女比が出ていない。それはある意味男女平等ということの現れかもしれないが、それではこちらは話にならない。
まさか9桁になんなんとする兵員リストを一から数えていく訳にもいかない。
ではどうするか。
「なんとか記録部に交渉できないかしらね?」
そう言ったのは管理部門一筋のアリュスラである。
管理部は乗組員を様々なカテゴリに分けて集計することが多い。それを踏まえての発言だった。
「交渉、とは?」
モーナが尋ねる。
元が記録部だけに記録部絡みの話は全てモーナに回ってくる。「私は室長の副官ですけど?」と言ったところで、最終的に話はレイナート経由でやって来るから意味はない。結局モーナも研究室の研究員のように仕事をさせられる羽目となった。
「記録部は生データを持ってるんでしょう? それを加工して渡してくれないかしら?」
アリュスラが聞く。
だがモーナは首を横に振った。
「それは無理でしょうね。
例えば戦闘レポートの場合なら、そのフォーマットに沿って集計します。ですがこういった形の集計は過去に例がありません。ですから記録部に依頼してもやってくれるかどうか……」
自分の過去の経験から「それはあり得ないだろう」と言うのだった。
「でも、これがないと始まらないわよ? まさかみんなして数える?」
アリュスラが言うと一斉に非難の声が上がった。
「無理、無理、無理、絶対無理!」
「そうよね、それこそあり得ないわ」
「じゃあ、どうするのよ?」
そこでみんなは研究室の会議テーブルの奥の壁に顔を向けた。
「やっぱり、ねえ?」
「まあ、そうでしょうね」
「そうよね? それしかないわよね?」
ということで、レイナートは研究員たちの訪問を受ける。
「……それで、私に記録部と交渉しろ、と?」
「ええ。お願いします、閣下」
と、コスタンティアを始め女性たちがニッコリと微笑む。
「はあ~」と深い溜息とともにレイナートが立ち上がる。
「でも、あまり期待はしないで下さい」
レイナートがそう言うと女性たちは首を振る。
「いえ。それでは何も始められません。ですから何卒よろしくお願いします」
そう深々と頭を下げられてしまう。
再び深い溜息とともにレイナートは記録部へ向かうのである。
記録部ではいきなり戦術研究所の研究室長の1人に来訪を受け、しかも受付では対応に困る話を持ちかけられて泡を食う。
結局、記録部長にまで話が行ってしまう。
「……ということなので、なんとかならないでしょうか?」
レイナートは通された記録部長室で依頼する。
「と言われても……」
記録部長は困惑する。
記録部はそれこそ全記録の管理が主任務だが、その取り扱いに全権を持っている訳ではない。
例えばセキュリティ設定。どこまでのセキュリティ・ランク保持者を閲覧可能とするか。それは言い換えれば情報開示の規定であり、最高幕僚部のみならず監察部、公安部、法務部、さらに作戦部や戦術部など、各中枢部門の合意のもとに運用されている。したがって記録部長一人の判断でどうするこうするの問題ではない。
「それでは関係各所の了解が取れれば?」
記録部長自らが動いてくれる気配はないから、レイナート自身がその労を取る必要がありそうだったが已むを得まい。
「ええ、それであれば問題はないでしょう」
記録部長の少将が言う。上位の者に対して言葉は丁寧だが態度はぞんざいに近いものだった。
レイナートはいまだ30代半ば。その上、士官学校一般科卒。中央総司令部のお偉いさんからすれば「この若造が偉そうに!」と思われていても不思議ではない。
だがそうなると益々話は一筋縄ではいかなくなる。
何せ相手は皆、将官で重要部門の長。ただ会いに行っても会ってくれる訳がない。
記録部の場合は受付が困って部長まで話を持っていったからそれでも会えたが、他はどうかはわからない。
結局オフィスに戻って、モーナにアポイントメントを取らせる作業から始めなくてはならない。
―― 全く、無駄な話だ……。
組織が肥大化すれば官僚化するのは避けて通れないから仕方のない話ではある。
―― だがこれで緊急時に即応できるのか?
実戦部隊の艦艇は臨機応変でないとやっていけない。接敵したり海賊を見つけたりした際、一々上にお伺いを立てていたら、攻撃許可を取る前にこちらが沈められてしまいかねない。
だからこそ明確な交戦規定が定められ、厳格に運用されている。レイナートもリンデンマルス号艦長時代、これに従って艦の指揮を執っていた。
だがこの中央総司令部はどうか。あまりに全てがお役所にすぎないか?
これが士官学校から軍大学校、戦術研究所とストレートに来た作戦参謀や幕僚ならまだわかる。彼らは現場をほとんど知らない。頭だけで戦争を考え、頭だけで戦争を行わせる。
だが全員がそうではないだろう。現場を経験し今の立場を得た人物もいるはずだ。彼らはなんとも思わないのだろうか?
そんなことを考えながらレイナートは関係者巡りをする。
それでも直ぐに了解してくれるところはまだいい。
だが機密保持やら何やら持ち出して中々「うん」と言ってくれない。
結局レイナートは自らの研究室が設立された趣旨を一から説明するハメになる。
徴兵された女性の実戦配備への問題点の洗い出しとその解決案の考察。それを言うと皆、大抵は嫌な顔をする。
だがレイナートにすればそれこそ今更じゃないかと言いたい。これを決定し命じたのは誰方です? あなたたちの決定に従ってこちらは作業してるんですよ? と。
結局渋々OKしてくれた。
そうしてとにかく研究室立ち上げ当初は、レイナートはこれに類することに終始したのだった。
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